考察
何でも考察ページ。
どのような内容でもよいので、時に楽しく、時に真面目に考察しましょう。
基本的にネタバレを考慮していません。
- 魔法戦士システムの残酷さ
- 魔法戦士たちの関係
- ゲネアー神殿で魔法陣を起動させたものは何だったのか?
- 謎の男の正体
- スミカとヤマトのすれ違い
- 「○○レベルで□□」
- ヤマトの異性交遊否定精神はどのようにして生まれたか?
- クオンはいかにして復讐しようとしたのか?
- クオンのボケは演技なのか?
- クオンの回想世界考察
魔法戦士システムの残酷さ
魔法戦士システムの残酷さ
本作の大きなシナリオ上のギミックである「魔法戦士システム」。
しかし、このシステムは考えれば考えるほど残酷さを孕んでいることが分かる。
1.事前承諾がない
命をかけて戦わねばならないのに、それに関する事前承諾がない。
この魔法戦士システムに最も衝撃を受けたのはスミカであろうが、彼女も
「ユウジを助けたいの。魔物も倒さないといけないの。だから戦って」
と一言でもあれば、まだ衝撃が和らいだのではないだろうか。
しかも「母親からオーブをもらったことが、スミカの支えになっている」(Story1-3ラスト参照)
という点が、さらに衝撃を重くしている。
2.忘却される可能性
この魔法戦士システム、よくよく考えると
「儀式の遂行者が吐かない限りバレようがない」システムである。
Story3-1冒頭、スミカを探すユウジは、このシステムを知らないようである。
(エンディングでは「俺のせいで……」と言っているので、母親から聞いたか、タクヤ経由で知った?)
儀式遂行者が沈黙を守れば、ワタルたちは「魔物に襲われて行方不明になった」とでも言われて片づけられるだろう。
イカルガを守るために戦っているのに、自分たちの存在はイカルガから忘却されるのである。
3.魔法戦士本人に見返りがない
このシステムによって救済される救済者と魔法戦士はイコールではない。
例えば、ワタルの犠牲で救済されるのはタクヤである。
そしてこの救済を望むのは、遂行者たるココロである。
つまり魔法戦士本人は、救済されもせず、それを望みもしていないのである。
4.魔法戦士の任務を放棄した先に待つモノ
自分に何の見返りもない。事前の承諾すらない。
このように、無理矢理押し付けられた魔法戦士システムを放棄した先に待つモノ。
それは「世間の冷たい目」である。
例えば、Story3-1で、スミカが
「お兄ちゃんのために犠牲になろうとも思えない……」と嘆いている。
ここから察するに、魔法戦士を放棄したスミカを待っている世間の言葉は
「戦いたくない? また兄が意識不明になればいいということか? なんて酷い妹だ」。
魔法戦士になったことに自分の意思はないにも関わらず、それを放棄すれば冷たい目で見られるのである。
その冷たい目に耐えることを、まだ若い彼らに強要することは難しい。
余談だが、こう考えるとStory3-2冒頭でクオンがスミカに放った台詞、
「それで好き勝手にやればいいさ。母親やイカルガが憎いなら魔物討伐なんて放棄して、
イカルガが壊れていく滑稽なさまを足組みながら眺めることだってできるんだぜ。」
が、一見非道に見えて実はかなりの決断を要することだと分かる。
クオンは、校長の一族や自分の両親を恨みながら生きてきた、ましてや復讐しようと考えていた人間である。
復讐、と言われれば、当然一般人は「なんて怖い奴だ」という目で見てくるだろう。
もしかしたら、一緒に世間の冷たい視線に耐えてくれる仲間が欲しかったのかもしれない。
もっともスミカには断られるわけだが。
5.負のスパイラル
勝手に世界の命運を押し付けられ、任務の放棄もできない。
魔法戦士は完全な被害者でありながら、それを嘆くことも許されない。
「何で私が」「どうしてあの人のために」
そう思えば当然負の感情がたまる。そして魔物を強くする。
その魔物と戦うのは? 魔法戦士である。
強い魔物と戦えば傷は増える。
「どうして私がこんな目に遭うの?」ますます負の感情はたまっていく――
魔法戦士が自分の立場を嘆けば、それは自分の首を絞めることになる。
まさに「負のスパイラル」に陥るのである。
ここから考えると、魔法戦士として完璧に仕事をこなせるのは
「他者のために尽くすことこそ自分の生きがいであり、
そのためなら騙されようが裏切られようが傷つこうが忘れられようが平気である」
という超人だけである。
しかし、そのような人間は得てして自分を無力に感じるものである。
そしてそのような人間が周りの人間を護れなかったときにどうなるか――並行ワタルから察せることである。
以上のように、魔法戦士システムは、若い男女にはあまりに酷なシステムである。
それは序盤の明るいトーク、パロディに富んだNPCなどからは想像もつかないものであり、
そのギャップが本作の特徴なのである。
魔法戦士たちの関係
魔法戦士たちの関係
魔法戦士たちが互いをどう思っているのか、1つの手がかりは話し方である。
例えばワタルは誰に対しても名前を呼び捨て、くだけた話し方をしている。
逆にアヤネは誰に対しても敬語であり、終始それを崩すことはない。
クオンも(もともとクールではあるが)特定の人物の時に変化する様子は見られない。
この3人の中では、魔法戦士たちは同ランク、同じ「仲間」として一律に扱われていることが分かる。
相手によって話し方が変わるのはスミカとヤマト、特にヤマトが顕著である。
スミカは、クオンと話す場合のみ「クオンくん」と「くん」づけになっている。
クオンが日ごろから学校を休んでいるのもあり、あまり面識がなかったと思われる。
その結果「クールで近寄りがたい」というイメージが定着したのだろう。
(Story2-2冒頭でボケ発言をしたクオンに対し、「なんかクオンくんのイメージが変わっていくんだけど……」と言っている。
物語スタート時は「狼みたい」「夜行性」と評している)
交流の少ない異性とは少し距離をとる。この辺りも、スミカにリアリティを感じやすい要因か。
ヤマトは、アヤネと話す場合のみ「アヤネさん」と「さん」づけになる。
しかも話し方も敬語になるのだ。
もともと異性交遊をよく思っていないため、学校で女子と話す機会もなかったのだろう。
また、ヤマトは規律や正義を重んじる性格である。
故に、面識の少ないうちはくだけた話し方をしてはならない、という意識があるのかもしれない。
こうすると、むしろヤマトから呼び捨てにされているスミカがいかにレアな存在であるかが分かる。
しかし本編では、この距離の遠い組み合わせ(スミカとクオン、ヤマトとアヤネ)がメインで絡むことになる。
人物の成長には、慣れ親しんだ人間でなく、少し離れた人間が必要ということだろうか。
「主人公たるワタルが独り身じゃないか」と思ったら負けである。
ゲネアー神殿で魔法陣を起動させたものは何だったのか?
ゲネアー神殿で魔法陣を起動させたものは何だったのか?
Story2-4、ゲネアー神殿にて魔法陣が起動した。
しかしヘル戦後に消えてしまう。
この魔法陣を起動させる条件とは何だったのか。
手がかりは魔法陣の起動と同時に出た紫色の光の柱である。
これは並行ワタルが本編ワタルたちの前から立ち去る時や、
Story4-1の回想にて、並行ワタルが世界を繋ぐときに見られるものだ。
並行ワタルは「負の感情」の象徴である。
(ちなみに、正の感情の象徴が本編ワタルであると考えられる。)
つまり魔法陣を起動させたものとは、負の感情であるということだ。
ヘル登場直後に、ヤマトが
「平和に暮らす人たちを巻き込んで、お前たちは何がしたいんだ!」
と発言している。続けてアヤネが
「このようなことは許されるべきではありません!」
と言う。
2人とも怒りを露わにしており、他の3人も魔物によい印象を抱いているとは考えにくい。
この「魔物に対する怒り」という名の「負の感情」が魔法陣を起動させたと考えられる。
謎の男の正体
謎の男の正体
謎の男の正体は「並行世界からやってきたワタル」だったわけだが、
その正体を推測するための布石は序盤から打ってある。
まず、ゲネアー神殿でのボス戦後の会話で、ワタルが「槍を向けられたのが初対面」と言っていることから、
謎の男の武器がワタルと同じ槍であることが分かる。
また、謎の男がゲネアー神殿やクオンの救済に入った際に見せた槍技のアニメーションは、
ワタルのEP技と同じである。
さらにクオンに対し「特にヤマ――青髪の男には」と、
ヤマトの名前を知っているかのような発言をしている。
以上のことから、多くのプレイヤーは彼の正体を
「何らかの方法で誕生したもう1人のワタル」と分析するだろう。
そしてStory4-1で並行世界の存在が明らかとなり、
「並行世界のワタル」という結論に帰着するのである。
スミカとヤマトのすれ違い
スミカとヤマトのすれ違い
本編であまり絡まないスミカとヤマトだが、2人は共通の台詞を発している。
ヤマトはStory3-1のラストで、スミカはStory3-3の序盤で、それぞれ
「スミカ(ヤマト)は勝手にいなくなるようなことはしない」と言っている。
その根拠は「ワタルがタクヤを失って泣いているところを、隣で見ていたから」である。
確かにスミカは1人で悩んではいたが、「死」という選択を匂わせるような素振りはなかった。
これはヤマトの信頼通りであるといえよう。
しかしヤマトは、スミカが上記の台詞を言った直後に自殺を匂わせている。
言ってしまえばスミカの信頼に応えていないということである。
スミカ→ヤマトという一方的な信頼関係に、どこか悲しさを覚える。
(このような心を抉りにくる描写を入れてくるところも本作の特徴か)
しかしヤマトの中でスミカの存在が小さいかと言われるとそんなことはないはずだ。
異性関係に厳しいヤマトが呼び捨てにするくらいであるからだ。
さらに、Story4-1以降にプロクトでチャットをすると、
ふっ切れたスミカを見て安心するヤマトの様子がうかがえる。
ただ、親しい人間との関係か、世界全体の利益か。
どちらを優先するかが異なっていただけなのであろう。
「○○レベルで□□」
「○○レベルで□□」
ツッコミ担当故に気苦労が絶えない我らのおっかさんことヤマト。
彼の独特のツッコミ発言は数あるが、
「○○レベルで□□」というものが複数見つかったのでまとめておく。
「呆れを通りこして感心するレベルのプラス思考だな」
(Story1-4)
「今この場で体罰を与えられても庇えないレベルで失礼だぞ」
(Story1-4)
「どこから突っ込めばいいのか分からないレベルで色々と間違っている」
(Story2-2 ワールドマップでのチャット)
なお、上記のツッコミはすべてワタルに対するものである。
アホの子ワタルとおっかさんヤマトのコントは、本作の代名詞でもある。
ヤマトの異性交遊否定精神はどのようにして生まれたか?
ヤマトの異性交遊否定精神はどのようにして生まれたか?
男女並んでいるカップルNPCに話しかけるともれなく突っ込み、
ワタルがアヤネに「どうりでいい匂いがすると思った」と言っただけで怒り出すヤマトの異性交遊否定精神は、
実はその辛い生い立ちゆえに形成されたものである可能性がある。
ヤマトの父親は母親が病気になった瞬間、家族を捨てて立ち去っている。
母親も、「あなたあなた」と夫を求めている。
「妻」ではなく「母親」ならば、まずは息子の傷を癒そうとするはずである。
つまりヤマトの両親は「恋愛関係」から「家族関係」に移行することができていなかった可能性があるのだ。
そんな両親を見て、ヤマトは
「軽い気持ちで恋愛関係に至れば、自分のような思いをする子供が出るかもしれない」という考えになり、
異性交遊否定精神に繋がったと考えられる。
ヤマトは
「父が幸せを求めたせいで母は不幸になった。自分は幸せを求めてはいけない」
と考えるような人だ。
「両親が軽い気持ちで恋愛関係になったせいで離婚した。自分は恋愛関係をもってはいけない」
と考えてもおかしくはない。
クオンはいかにして復讐しようとしたのか?
クオンはいかにして復讐しようとしたのか?
クオンは、父親に冤罪自殺をさせた校長先生の一族に対し復讐を目論んでいた。
しかしクオンは戦士学校の首席であり、現状ではむしろ学校のために貢献していることになってしまう。
(校長先生からも「入学試験に満点で合格した生徒は君が初めてです。期待していますよ」と言われている)
では、クオンの復讐とはいかなるものだったのか?
それは「首席として戦士になった後に期待にそわない働きをし、学校の評判を下げること」だったと思われる。
まず、校長一族がクオンの父親に罪を着せた理由は、戦士学校の評判を落とさないためである。
復讐というからには、相手が最も恐れることをするだろう。
ましてや、例えば自分が一族を殺害した場合、
「犯罪者の息子も犯罪者だったか」と語り継がれることになり、
自分の父親の「犯罪者」としての名を広めるだけである。
そう考えると、復讐内容は自然と「戦士学校の評判を落とすこと」になる。
では、どのようにして評判を落とすのが効果的か。
戦士として役職に就くにはそれなりの経歴と能力が必要である。
そしてクオンは、座学は首席・剣も魔法も使える万能戦士と、
役職に就くための実力は充分に持っている。
そんなクオンが「全く役に立たない」としたら。
「イカルガ戦士育成学校の首席とやらはこの程度か」と笑われるのがオチである。
(Story1-4で、校長先生は「他の学校の戦士に大将を奪われるとは、何たるザマだ!」と罵倒されている)
そして、学校の評判は間違いなく落ちる。
執筆者の推測が入っているので、これが真相かは分からない。
クオンのボケは演技なのか?
クオンのボケは演技なのか?
クールな一匹狼かと思いきや、
ワタルと息ぴったりなコントを披露したり、
あらゆる形容詞をもってしても説明できそうにない物体(ヤマト談)を笑顔で見せてきたり、
アメンボの観察をしていたり、
見えないところでせっせとアイテムを収集していたりと、とにかくつかみどころのないクオン。
そんなクオンの奇行は、実は演技なのではないか? という説が浮上している。
まず、ゲネアー神殿でのチャットで自らの発言をスルーされて拗ねている。
ポーレート軍師支部では「珍しくまともに返してやったのに」と不服の様子である。
クオンはもともと、両親に先立たれ「置いて行かれたくない」という感情が強い人物である。
つまり「意図的にボケることで、自分も仲間に入れてほしい」という心理が働いている可能性がある。
(本人がどこまで考えているかは定かではないが)
仮に家族関係のトラブルがなかったとしても、天才故に孤独感を持ちそうではあるが。
(おしまいの部屋で制作者直々に「精神的孤独に弱い」と言われている)
また、チャットで絶えずアイテムをくれるクオンだが、
その収集癖はおそらく、魔法石を合成してお金にしているところから来ていると思われる。
(魔法石合成には当然素材が必要である)
過酷な生い立ち故の収集癖を、あえてギャグっぽくアイテムを出すことで包み隠し、
他の魔法戦士たちに引かれてしまわないように、という不安からくる配慮なのかもしれない。
それでも、「アタシの我儘に付き合わせている」と悩むスミカを見て、
わざわざボケ発言をしてまで隠してきた過去を明かしてしまうのだから、
スミカへの優しさと見るべきか、スミカに自己投影していると見るべきか。
どこまでが素で、どこからが演技なのか。
まさに「つかみどころがない」性格である。
(制作者によるコメントで、優秀でイケメンで影があって、実は寂しがり屋というのが、
クオンという人間を表す最も的確な表現と思われる)
なお終始ボケに徹している槍術家の男性もいたが、彼は間違いなく素である。
クオンの回想世界考察
クオンの回想世界考察
Story4-2時、陽動作戦でじり貧になったクオンが回想する世界。
色々と細かいので考察してみる。
まず父親のもとにかけよるクオンを遮る鏡は、
三種の神器である八咫(やた)の鏡だと思われる。
八咫の鏡は裁判官がつけているバッジのマークだ。
そして地面に花が咲いているのは
弁理士のバッジのマークである、菊をイメージしたと考えられる。
菊は正義を象徴しているからである。
また、父親を突き刺しているのが剣であることも、
「(父親は)自殺した。自分が振るった剣で」というクオンの証言に一致する。
次にクオンの母を突き落す際の3人の女性は
おそらくクオンの父親に関する噂話をする主婦のイメージだろう。
そして辛いのは、その女性たちは歩行の際に歩くモーションがないのに、
クオンの母はしっかり歩行していることである。
これはつまり、母が抵抗せず、自らの意思で崖に向かっているということである。
さらに階段をのぼるワタルたちは、
おそらく両脇に立っている人々に魔王討伐の栄誉を称えられ、
華々しい未来を歩んでいく暗喩と思われる。
しかしクオンは敗北の因子を持っているため、
その道を共に歩くことはできないのだ。
クールキャラであるが故に難しいクオンの心理描写が
比喩的・間接的表現を用いて視覚化されている。
(制作者自身が、暗喩を入れている旨をブログに書いている)
- 最終更新:2015-03-29 11:59:48